会長所信

会長所信

2025年6月18日
全国地方銀行協会
会長 片岡 達也

全国地方銀行協会 片岡 達也

日本経済は、長期にわたるデフレからの脱却に向け、物価と賃金の双方が上昇傾向を示しており、景気の回復基調が徐々にみられる状況にあります。 このような環境変化を背景に、昨年マイナス金利政策が解除され「金利のある世界」が到来しました。この政策変更により金融市場の構造は変化し、資金運用や企業の投資活動の在り方に大きな影響を及ぼしています。
 一方、国内には依然として多くの課題が山積しています。少子高齢化に伴う人口減少は、地域社会における労働力不足を深刻化させるだけでなく、企業活動や消費市場にも悪影響を及ぼしています。また、米国の関税措置を契機としたグローバルな自由貿易への懸念は、サプライチェーンに不透明感をもたらしています。
 こうした複雑な環境下において、全国地方銀行協会の会員銀行には地域経済を支える重要な役割が求められています。地域企業や個人のお客さまのニーズに応えるだけでなく、地域社会全体の持続可能な発展を後押しすることが私たちの使命です。その使命を果たすためには、地方創生を実現するための施策を、行政とも連携しながら進めていくことも重要であると考えています。
 全国地方銀行協会は「地方銀行の健全な発展を通じて金融経済の伸長に寄与し、もって公共の利益を推進する」ことを目的としています。会員銀行が地域のお客さまの課題解決に取り組むことで、銀行自らの企業価値向上が果たせるよう支援し、また、それを効果的に実施するべく、協会自身も「協会運営の高度化・効率化」に取り組んでまいります。

 本年度は次に掲げる3つのテーマを柱に据え、様々な取り組みを行ってまいります。

Ⅰ.会員銀行による地域経済への貢献
 全国地方銀行協会は、以下の会員銀行が地域経済の発展のために提供している各種取り組みの充実のため、適切な情報発信や好事例の共有等を通じた支援を継続していきます。
・地域の中小企業に対する資金繰り支援に留まらない事業承継等の包括的な経営課題の解決への対応
・環境・社会・企業統治(ESG)への配慮を求める市場ニーズに対応し、サステナブルファイナンスの推進によるSDGs(持続可能な開発目標)の達成のサポート
・地域産業のイノベーション創出を後押しするためのスタートアップ企業への支援の強化
・資産運用立国の実現を視野に入れ、お客さま本位の業務運営を基盤とした個人のお客さまの資産形成の長期的な支援
・金融リテラシー向上を目的とした金融経済教育への積極的な取り組みと、地域のお客さまの経済的安定と未来志向の投資活動の促進
・お客さまが安心して金融取引ができる環境を提供するため、サイバーセキュリティ対策、金融犯罪防止、マネー・ロンダリング対策等の高度化への対応
・業務効率化支援のためのデジタル化の推進と、手形・小切手の全面電子化を含む生産性向上施策の着実な実行

Ⅱ.会員銀行の持続的成長と企業価値向上
 会員銀行が、各地域経済の成長を長期にわたり担い続けるためには、銀行自らの持続的成長と企業価値向上が不可欠です。全国地方銀行協会は、これを実現するため、会員銀行における社会的要請への対応と経営基盤の強化をきめ細かくサポートしていきます。
 具体的には、会員銀行に対し、人的資本経営の推進、コーポレートガバナンス改革の深化等、持続可能な経営体制の構築に資する情報提供を進めていきます。また、リスク管理およびコンプライアンス管理態勢の高度化に向けた取り組みの共有を通じて、金融業界全体の信頼性向上に努めるとともに、金融規制・法制度対応に関する適切な情報発信を行い、会員銀行の企業価値向上に貢献していきます。
 そして、会員銀行が革新的なビジネスモデルに挑戦しやすい環境を整備するため、規制改革や政策提言を継続するほか、郵政民営化に関する建設的な意見発信や、政府系金融機関との連携・協調による地域金融基盤のさらなる強化にも取り組んでいきます。

Ⅲ.協会運営の高度化・効率化
 会員銀行の様々な取り組みを支援するため、協会運営の中期ビジョンに基づき協会自身も業務の効率化と高度化を推進します。
 研修事業や共同事業の円滑な運営を通じて、会員銀行の効率化等に資する取り組みを進めていくほか、情報発信機能を強化します。また、会員銀行がお客さまの多様化するニーズに対応できるよう協会として会員銀行に対する提供サービスの充実に取り組んでいきます。

全国地方銀行協会は、これら3つのテーマに掲げた取り組みを通じ、会員銀行が地域経済の持続可能な発展に貢献できる基盤を強化し続けられるよう、全力で取り組んでまいります。

以 上